夏休みに入って数日|アロマ

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 夏休みに入って数日が過ぎていた。僕は日課のように午前十時前になると部屋からベランダに出てアイツの家を観察していた。女子大生風の家庭教師が訪れる時間は、不思議に感じるほど規則正しく決まっていた。アイツひとりが、毎日のように年上の女性に誘われてマシュマロの胸をさわり、欲望という名の本能を放出しているのかと想像すると、やるせなさ、と言うよりは切なさ、ばかりが頭に浮かんでいた。

 そんなつまらない事を考えている僕はと言えば、三ヶ月ほど前に買ったバイク雑誌を眺めては、規則という名の下に固められた学校生活をうらやんでいた。十七歳といえば成人している訳ではないが、法律ではバイクの免許を取れる年齢である。だのに学校側が免許取得を禁止しているが為に、こうして自由な生活を送れない事態になっている状況を理不尽だと、自分自身に訴えていた。

 僕の携帯電話がメールではなく、本来の電話機能として、誰かが電話を掛けてきていると着信音を鳴らした。自分でも驚くほどの速さで携帯電話を持ち上げ画面を開く。少しだけがっかりと肩を落とす自分がいた。中学生の頃から仲が続く裕也からの電話だった。

 拓夢、元気かよ。と携帯の向こうで話す裕也は明らかに元気が無かった。
「どうしたんだ、裕也。元気ないじゃないか」
「いや、そのー、ちょっと拓夢に頼みたい事があってさ」
「何だよ頼みって」
「その……言い難いんだけど、金を貸してくれないか?」僕の脳細胞の中で

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